芥川賞受賞作
話は、借金の返済のためにインドに渡って一流企業で日本語を教えることになった主人公。ある日外に出ると百年に一度の洪水で街中が泥だらけになっていた。泥の中から出てきた思い出の品をきっかけに当時の思い出が想起されたり、日本語教室での出来事を振り返ったり…という話
あらすじを読むと現実味のある災害の話なのかなって思ってたんですけど
まあファンタジー
会社には翼を使って空を飛行して通勤したり、泥の中から昔の友人が掘り出されたり、母親が人魚だったり
最初の方が現実に即してるから途中で読み間違えかと思った
これだけ現実っぽく書いてるのにファンタジーの要素を組み込んでさらにそれにあんまり触れないっていうスタイル初めて読んだ
色んな表現にもバカバカしさがあって
結構雑然としてるのに書き方が一貫してるせいか筆者の個性みたいに感じられて
これだけ文章で個性出せるのはすごいわ
って思いましたね
ただこの本の面白さはそれだけじゃなくて
インドの文化についても色々書かれていて
恋愛結婚より見合い結婚が一般的なこととか
駆け落ちが命懸けなこととか
馬鹿馬鹿しさのある文章のなかにあるからこそ
こういう部分が光っていて
それを作者が意図してるならなおさらすごいわ
日本語の教師を仕方なくやる羽目になった中年女性もインドの青年たちも立場をあまり想像できない自分からしても心の流れ方みたいなものを理解できるし、まったく不自然さを感じないのもよくできていますね
近年の芥川賞でいうとちょっと異色っぽいんですけど読みやすくて面白くてとても良かったですね