野間文芸新人賞受賞作
あらすじ
自殺した従姉の奈々から僕の元へと紙束が届いた。紙束は日曜日の人々という団体について書かれているものだった。僕は日曜日の人々が集まる寝室と呼ばれる部屋を訪ね、そこで自死を望む吉村、盗癖のあるビスコ、拒食症のひなのたちと出会い、奈々の自殺について調べていくが…という話
すごく好きだった
ただ自傷の描写が結構あるので精神的に安定している時じゃないとちょっとキツいかもしれないですね
高橋弘希さんの作品は「送り火」しか読んだことなかったんですけど
そこで感じた良い要素がこの作品では凝縮されている気がして読んでよかった
では具体的に良かったところを3つほど
1つ目は日曜日の人々という団体の雰囲気
それぞれの人物が訳ありで上手く社会で生きていけない人たちなんですけど
朝の会という自分のことを発表することで
自らと向き合って自立しようとするこの団体の雰囲気がすごく好き
それぞれの人物も悪意を持っておらず自らの性質に苦しんでいる人々だということが伝わってきて
それぞれの人物を好きになれるからそれだけ描写はキツいところもあるんですけどね
とにかく良かった
2つ目はひなのと僕の関係
拒食症のひなのは毎週水曜日の昼に僕にご飯を作ってくれるんですけど
自分は少ししか食べないで
僕も子どものような身体のひなのに対して
性欲を抱かずに娘のように思っていて
ひなのが入院した後も僕に対して冗談を綴ったチャーミングなメッセージを送ってくる
っていう絶妙な関係性が良い
人間愛を感じさせてくれますね
3つ目は最後の結末
僕は吉村やひなののことを受けて疲弊していて
自らも落ちていこうとするんですけど
そこで幻想を見て必死にもがいて
最終的に希望が見出せなくもないくらいの状況になって終わるんですね
そのハッピーエンドではないけど最悪な事態は回避できた終わり方が好きだった
この話の人たちが好きだからこそ
バッドエンドで終わらなくて本当によかったなって思います
当然何人かが亡くなっているからその分の悲しさはあるんですけどね
高橋弘希さんの作品全部読みたくなった
自傷の描写を書くのはたぶん筆者もある程度ダメージを受ける行為だと思うので無理はしてほしくないですけど
でも高橋弘希さんにしか書けないものは多いなって思いますね