芥川賞受賞作
こういう小説があるから芥川賞はやめられねえわ
話は全部で4つ収録されているんですけど
どれも繋がっているように書かれてますね
ここでは表題作の『グランド・フィナーレ』について
話は、
妻と離婚して親権も得られなかった主人公がどうにかして娘のちーちゃんに接触しようとしたり、連絡先を渡そうとしたりするが友人たちと主人公の過去の行動を追及するような会話により、現実を向き合う前半と
自らの過去を反省した主人公は子どもと触れ合う機会を断ち切っていたが、子どもの演技指導をしてほしいという依頼がきて…という後半からなる
阿部和重さんの作品は伊坂幸太郎さんとの共作だった『キャプテンサンダーボルト』以来で
個人の作品は初めて読んだんですけど
良い意味であまり印象が変わらなかったですね
『グランド・フィナーレ』というタイトルと表紙の感じからとっつきにくさを感じてたんですけど
簡単に言うと少女性愛とかロリコンと言われる人の話で
文章自体は凝っているけどテーマがハッキリしてるんで咀嚼しきるのは難しいけど読むのはそこまでハードル高く読めるかなって思いますね
内容については
徐々にわかってくる主人公の過去が怖いんですけど
文体がまた淡々としてるんでその怖さが強調されますね
ただ最後まで怖いまま終わらないのは話としてはちょっと珍しい気がして
後半では主人公にも感情移入のしようが残されてるのが読後の清涼感みたいなのにも繋がっているのかなって
このテーマで読後の爽やかさが感じられるのも特異的で良いですね
仲間との関係性とかやり取りが
村上龍さんの『限りなく透明なブルー』にも通ずるところを感じさせてくれてちょっと嬉しくなった
YとかIとかの人間性もまた良い
構成的なことを言うと
前半と後半を時系列的にもページ的にも完全に隔絶することで
主人公の人間性の変化とか前半の最後の話の余韻と影響がより浮き彫りにされてる感じがあって
短めの小説でもこれだけインパクトのある攻めた構成もはまることがあるんだっていうのが新しい発見でしたね
阿部和重さんの作品へのハードルの高さをちょっと下げてくれて良かった
他にも読もうかな〜