話は、親に虐待された後施設で育てられた主人公が27歳という歳でタクシードライバーをしていて、家ではアルコール中毒の女性とともに暮らしている。タクシードライバーをするなかで土の中に埋められた記憶と施設での孤独感、絶望感が巣食いながら生きていき…という話
このタイトルでこの内容で読後感はそれほど悪くないのが良かった
土に埋められたところから生まれたっていうすごくマイナスに感じることをプラスなことのように書いているのがひねくれ心をくすぐりますね
色々なものが欠けていて足りないような存在の主人公が同じように欠けている存在の女性と関わるところを依存という形でなくて、一線を画した存在の保証のような関係性で繋がっているところ
主人公がモノを落とすという身体の外側に依存した自傷行為に心を落ち着けているところ
幼少期の人間関係、力関係というものと大人になってからのそれらの関係が独立的で、でも連続性は感じさせるような書き方をしているところ
といったところが特徴的でそのバランスが心地いい
物語全体の印象は暗いけど些細な幸せが無理のない範囲で書かれているのが無理やり暗くしようとしているような印象を除いて自然に入ってくるし、読んでいて苦しくなくて、どこか爽やかでスッキリともして
面白かった
