文藝賞受賞作でデビュー作
話は性自認が男とは言えない女装が趣味の主人公が、そういう心の構造上男友達といろいろあったり、顔が整ってるとは言えない幼馴染の家に泊まったり、男にナンパされたり、それでも風俗店を利用してたりといった日々の中で起こるあれこれの話
たぶん1時間もかからずに全部読んでしまった気がする
それくらい平易な文章なんですけど
個性を一切出さないことがめちゃくちゃ個性的というか読むのは簡単だけど書こうと思ってもなかなか書けない文体っていうのが遠野遥さんの魅力ですね
内容については
はっきりとLGBTのこれっていうスタンスではなくてカテゴライズされない心の中の葛藤が繊細に描かれているのがとても良かった
このテーマで断定的なものが書かれすぎるのはやっぱり物語として変だと思うんで
その辺りを揺らぎをそのまま文章に書き出してるのは素敵ですね
あと他の本と比べてエピソードの数がめちゃくちゃ少ない気がして
出来事としては言ってしまえば大したことはあまり起きてないとは思うんですね
でもそれぞれについて文量を多く取りながら書くことでわずかな出来事でも色々と考えているのが強調されていて
それがこのテーマの本質を見事に捉えてる気がするんですね
めっちゃ偉そうになった…
個人的に好きなのは幼馴染と風俗店の女性の2人との関係性との違いで
主人公はそれぞれと誠実、というと語弊があるかもしれないけど、正面から向き合っているけど2人の中の主人公の中の立ち位置が違って
最終的な展開としては風俗店の女性との関係性はプラスではないけど完全にマイナスなままとも取れずに終わるのが味がありますね
幼馴染とは全くどう転がるかもわからないですし
いろいろ考える余地が残されてるのも楽しいですね
面白かった