芥川賞受賞作
話は、
高校で倫理の授業を担当している慎一が風俗で出会ったサチコと出会い、ともに暮らしていくなかで自分の中に眠っていた暴力の欲求を芽吹かせ次第に人を壊そうとしていく…という話
めちゃくちゃ怖いけど好きだなぁって思います
暴力描写と性描写が多くて王道の芥川賞みたいな感じですね
王道って感じはしないけど
人の醜いところに焦点を当てていて
それぞれのキャラクターがしっかりと存在感を放っていて好き
慎一は先生ではあるけど人に興味がなくて暴力的で
サチコは風俗で働いていて明るくて忍耐強いけど知性に欠けていて
っていう2人の人間の欠けた部分に対する印象が強く残るし
まったく立場も性格も異なる2人が色んな意味で互いを必要とし合うけど関係性的には全然上手くいかなくて
とにかく怖いけど切ない
主人公の人柄が少し中村文則さんの『遮光』とか『銃』とかの主人公と重なる部分があって
世間的な立場は真っ当だしちゃんと人間としての理性とか愛情みたいなものを持ってはいるのに
刹那的に身体の内側に秘めている暴力性が外側に出るあたりがまさにカマキリとハリガネムシの関係みたいでそれをタイトルにする感性の鋭さにもう感服
決して強い人間ではない登場人物たちがわかりにくい関係性を築きながらも支え合う様が繊細で生きづらさを描いてくれていて好き
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