活字中毒者の禁断症状

引きこもりが読書感想文を提出するブログ

【読書感想文】こちらあみ子・ピクニック / 今村夏子

太宰賞受賞の今村夏子さんの作品


『こちらあみ子』は

少し変わった女の子のあみ子が主人公で、小学校の頃から周りから浮いていた。あみ子は母親に死産した弟の墓を突きつけたり、好きだった男の子にコーティング部分のチョコレートを全部舐めた後で食べさせたりということを悪気なくしていく。ただそれらのことで周りの人間関係や周りの人の人格は壊れていき…という話


『こちらあみ子』の感想は正直難しいなって

あみ子は言ってしまえば発達障がいを抱えてる子どもで人の感情を読み取るのが難しいから人の感情の変化に気がつかないからいろいろしてしまうけど

相手がその結果どうなっているのかも原因と関連づけてはわからないから

責任どうこうとか頭が良い悪いとかの問題でもないしなぁって


この本ではあみ子視点で書かれているからあみ子の世界がわかるし、あみ子が魅力的な風に思えるけど

だからといってあみ子が魅力的ですって言うだけなのは無責任だし、現状そんなに障がいをもつ人に優しくない世界だし

あとあみ子に何かをされた周りの人たちの気持ちがわかるしな

普段自分が繊細な分、デリカシーが一切ない行動はやっぱり精神抉らからなぁって


発達障がいをもってる人を街で見るたび

とても胸が苦しくなるタイプなんですけど

どう向き合うのがいいのか本当にわからんなって

教育の本とかあんのかな


『ピクニック』は

水商売?っぽいレストランにやってきた周りより一回り年上の七瀬さんという女性には、タレントをやっている彼がいて、その出会いは溝に落とした運動靴を拾ったという運命的な出会いによるものだった。その話を聞いたり、テレビに出る彼を一緒に見るためにルミたちは七瀬さんと仲良くなる。そんなある日彼はまた溝に携帯電話を落としたらしく、七瀬さんはそれを探しにいく…という話


『ピクニック』はめちゃくちゃ今村夏子さんらしいなって思いますね

主観的なことをあたかも客観的であることかのように書いてるあたりだったり、事実と異なる内容を事実と言い切って書いてしまうことでわざと曲解させようとしたりしているところが好き

真実を真正面じゃなくて斜め60度くらいから見てる感じ


一見するとこの本って七瀬さんっていう虚言癖と妄想癖のヤバい人がただ現実と妄想の区別もつかない行動をしてて、新人がそれをいじめてるっていうようなことが真実であるように書かれてるんですけど

それにしては色々変だなって


まずルミたちっていう表現が出ているのにたちっていう部分への言及が一切ないところですね

たちとは言っておきながら複数の感じがあんまりしないんですよね

だからルミという人間は1人で人格が2つとかなんかなって


あと新人と話してる時に七瀬さんが楽しそうにしてるっていうのがたぶん事実で

いじめてるのは主人公側だよなっていうのが

いじめの犯人がわかってないところと数少ない客観的な事実からわかるし


最後に七瀬さんに主人公がずっとついてるのが主人公の生活を考えるとおかしくて

虚言癖を見抜いた後に主人公がそれを後戻りしたり、撤回したりできないように徹底的に見張ってるようにも見えて

そういうちょっと主人公側にとってマイナスな要素が省かれて書かれてる感じがするんですよね


今村夏子さんの本は主人公の視点が第三者に近い視点じゃなくて専ら当事者視点で書かれているからとても主観的な内容が描かれて楽しいですね

何回読んでも発見がありそう