活字中毒者の禁断症状

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【読書感想文】青が破れる / 町屋良平

文藝賞受賞作


あらすじ

ボクシングジムでトレーニングをする主人公は、友人であるハルオの恋人のトウ子さんの見舞いに行き、もうトウ子さんが永くないことを聞く。主人公はそれから同じジムの梅生とスパーリング仲間になり、親交を深め、ハルオと3人で話をするようになる。やがてトウ子さんも含めて4人で車で出かけて…という話


町屋良平さんの話の主人公は軒並み暗めなんですけど嫌になる暗さじゃないから読みやすい

あらすじには組み込みにくかった不倫相手の夏澄さんとその息子との関係性も物語のところどころでアクセントになっていますね

芥川賞を受賞した『1R1分34秒』と同じくボクシングをする主人公なんですけど

当然ながら2つの作品が似てる印象はあまりなくて本作はボクシングにはそこまで焦点を当てずにメインは周りの人間関係っていう印象でしたね


では面白かったところを3つほど紹介

まず1つ目はトウ子さんの人柄とハルオとの関係性

トウ子さんの全てを受け入れているような器の大きさを感じさせる人柄がまず魅力的

だけどハルオとは距離が近い関係性であるがために上手く関わりきれていないような関係で

距離の遠い主人公に話しかけることが多いのが良い

一人の人間の心を立体的に描いてますね


2つ目は夏澄さんの息子との複雑な関係

不倫相手である夏澄さんとの関係性自体も主人公が一方的に好きだという関係で会っているっていうちょっと変わった関係なんですけど

夏澄さんの息子とも何度か会っていて

その息子とは何だか純粋な友情に近い関係性になっていて

後ろめたさとかなくて会えるけど夏澄さんも感じさせるっていう微妙な関係性が絶妙


3つ目は最後の書き方

最終章?みたいなところに当たるところの書き方がちょっと珍しい気がして

先に結論を書いて具体的に書いていく

っていう書き方をしていて

急に衝撃的だったのに過去を回顧的に書いてるような雰囲気が増していることで逆に事実がじっくりと沁みてくるような気がして

この書き方を思いつくのはすごいなって思います


やっぱり文藝賞は好きなの多いですね

もっと読んでいきたいな