今村夏子さんの芥川賞候補作
『あひる』
話は、
ある日家で飼い始めたのりたまという名前のあひるをきっかけに家に近所の子どもが来るようになる。子どもの相手をする母親は楽しそうにしていたが、のりたまの元気がなくなって病院に行き、帰ってきたあひるは明らかに前と違っていた。しかし周りはみんなのりたまと同じように接する。そして子どもたちはどんどん家の内部に入っていくようになって…という話
今村夏子さんの作品特有の語り手である主人公に実体がないような描かれ方で本作は書かれているんですけど
さらに子どもたちにもあひるにも感情だったり、躍動感だったりっていう生物感が全然感じられなくて
どれも彼もが全部不気味で怖いですね
あひるとか子どもっていうのが一種のメタファーとして機能してるっていう捉え方もあると思うんで以下自分なりの解釈でいくと
あひるが変わってるのに大人たちはそのことに気がつかずに主人公とか最後に出てくる子どもとかだけが気づいてるっていうのは
表面的なことをなんとなくでしか見ようとしなくなっている現代社会へのアイロニーみたいに感じましたね
子どもたちにどんどん家が荒らされていく様子も
実体を見ずに固定観念で子どもが無邪気であることを手放しでかわいいと思っていることだったり
心淋しさみたいなものをその場凌ぎ的に埋め合わせることの危険さだったり
っていうのを暗示してるんかなって思いましたね
今村夏子さんの作品はスラスラ読むことができるのに象徴的な存在を用いることで色々なことを考えさせてくれてとても好きですね