村田沙耶香さんの初期の頃の作品
話は、
前半は小学生の頃の話でおとなしい女の子である主人公の律のクラスに自分の空想の中の灰色の部屋に籠っている痩せた気味悪がられている瀬里奈がいた。瀬里奈に悪戯をしたくなった律は瀬里奈が嫌がっている物語の読み聞かせをする。すると瀬里奈は豹変してその物語の主人公になりきって明るく振る舞うようになり、クラスの中心になっていく。
後半は大人になってからの話で輝いていて劣等感を抱く律と瀬里奈の話
村田沙耶香さんの作品で全く性をテーマにしていないものは久しぶりに読んだんですけど
とてもよかった
主人公は人の目を気にする性格で自分より下の存在としていじめようとしていた瀬里奈がその悪戯によって救われるっていうのがちょっとめずらしくて良いなって
物語の進行的には悪意のある行為をしてその結果が良い方向にいっても何らかの形でちょっと不利益を被る展開が一般的だし、自然な気もするんですけど
必ずしもそうじゃない話があっても良いなって
勧善懲悪ってあんまり好きじゃないですからね
正義的すぎて
この本の構成でおしゃれなのはマウスっていう象徴の対象が前半が瀬里奈だったのに対して後半が主人公の律になってるってのがもう
さらに後半で弱かったはずの瀬里奈が律を支える存在になっていてそれも良いしなって
弱いっていうと悪いイメージになってしまうけど繊細で周りからの刺激への耐性の強くない人が誰かの支えになる話はちょっと救われる
あと特徴的なのは瀬里奈に物語の主人公が憑依するっていうところだと思うんですね
その憑依って逃避の手段の1つだろうけどそれをしばらく続けていて自分の一部にしてしまえば本当に自分として機能して
もともと依存だったものが依存じゃなくなってみたいなその辺りが書かれているのがおもしろいと感じましたね
村田沙耶香さんの作品でここまではっきりスッキリ終わる綺麗な印象の作品があまりないと思うんですけどすごく好きだなぁって思ったんで
こういう話もっと書いてほしいなぁって思いますね