2020年の本屋大賞で10位以内に入った『夏物語』と川上未映子さんの最初のエッセイ集である『そら頭はでかいです、世界がすこんと入ります』についてまとめて
『夏物語』の話は、
第一部が、『乳と卵』のリメイクで
東京にある主人公の夏子の家に、豊胸手術を受けに来たという姉の巻子とその娘で生理が始まったことに対してとかに違和感を抱く緑子が泊まりにくる話
第二部は、
主人公の夏子が子どもを生む年齢のギリギリになってきた頃の話で、配偶者なしに子どもを生むことについて考える話
第一部は『乳と卵』のリメイクなんであんまり深く読まなくていいかなって思ってたんですけど加筆に次ぐ加筆で実際にはたぶん『乳と卵』の2倍近い文量があって読みごたえがありましたね
加筆されてる部分で印象に残ったのが
主人公が眠りにつく場面だったんですね
色んな小説を読んでいくなかで、主人公が細かいところが気になる性格みたいな描写が多いのに眠りにつくときの描写がやたらあっさりっていうことが結構あったんですけど
不眠症なめんなよと
神経質なめんなよと言いたくて
ただこの話の主人公の眠りにつき方が時系列がバラバラになって現実と夢がわからなくなってまた同じことを思い出してっていう書き方がされていて
覚醒状態でこの書き方できるのがすごいとしか言いようがないと思いましたね
入眠がリアルすぎる
で、メインの第二部なんですけど
子どもを生む話って
たとえ血がつながっていなくてもあなたは私の子どもだとか
生まれてきてくれてありがとうとか
そういうハートフル系のものが多いと思うんですけど
そういう綺麗事が反吐が出そうになるくらい大っ嫌いな身としては
この話はとても読みやすかったし心に響くものがありましたね
まず第一に
人工授精でシングルマザーで生まれてきた人とか虐待されてきた人とかが登場人物として出てきて
終始人工授精はもちろん子どもを生むことに対して否定的な考え方がずっと話の流れであり続けるんですよね
途中で物語の進行上で言えば少しはその考え方が変わる場面があった方が書きやすいとは思うんですけど
最後まで否定的っていうのがなかなかめずらしいと思うんですけど現実に忠実に書こうとするとそうなるよなぁって思いますね
そして1番印象的なのが
主人公が子どもを生む決断をすることを
間違えることにしたって言うんですね
今まで読んだ本で子どもを生むことを間違いだって言い切るものがなかったんで衝撃だったんですけど
その考えの親のもと生まれた子どもって
真っ直ぐな育てられ方をする気がするなって
自身が出産を経験した筆者がこういう風に書くのって
すごく考える人で繊細なのが伝わってきて
ちょっと似たところがある自分としては尊敬しますね
とにかく