古市憲寿さんの3作目
話は、国民的な人気の歌手として活躍していた主人公がステージの奈落に落ちて1ヶ月間意識を失う。意識を取り戻した後も動くことも喋ることもできなくなった身体でベッドの上で過ごす十数年間の話
この話全体を通してとにかく絶望的で
自分の身体の痒みとか痛みとかは感じるのに自分ではどうしようもできなくて
周りの時間は経っているのに自分だけが取り残されたまま時間が経っている感じで
特徴としてはとにかく人の悪意について描かれていますね
自分のお金が勝手に使われていることから始まって自分の身体を勝手に触られて自分の知的財産権も好き勝手にされて
自分の存在があるのに人として見られなくなっていく様子が経時的に描かれたてめちゃくちゃ憂鬱になる
そして期待が次々と裏切られていくんですね
回復できるかもと思ったら回復させられなくてこの人だけはわかってくれるかもっていう人に見放されたり、弄ばれたりして
個人的には母親がリアルで嫌でしたね
人形とか赤ちゃんとか可愛がるのと一緒で
自分と比べて何もできない対象を可愛がって
何かできるようになると憎む感じが人の汚さをよく表してて
なんか似たような話あったなって思ったんですけど
たぶんカフカの『変身』ですね
あれも理不尽に虫になって部屋から出られなくなって周りの状況だけが変わっていくんで
で、この話の感想あんまり良いのなかったんですけど
それってたぶん読んでる時の負の感情が感想を述べるときにも引きずってるからなんかなって思います
理不尽な不幸の話は我が身として考えると人間の本能として認めたくないんですかね
批判的な意見多いのもわからなくはないかなって
ただ人の悪意とか世の中の理不尽さについてここまで純粋に書かれているのはなかなか見ない気がして
あと全く動くことができない人っていう視点から書いてるのも面白いし
古市さんらしさがあるなって
根本的にマイノリティに向けられる視線に違和感を抱いている人なんだろうなって思います
『アスクミーホワイ』も読まなきゃ