古市憲寿さんの2作目
芥川賞候補作
話は、就職が上手くいかずに窓拭きの会社に勤めることになった主人公がある日高層マンションに住む老婆に部屋に誘われて盗撮を頼まれる
盗撮を繰り返すなかで老婆との関係を深めていき、職場の上司についてなどを考えていく…という話
いやーめっちゃ好きやった
古市さん自体が個人的に好きなんですよね
よく炎上とかしてるイメージなんですけど嫌な人というか利己的な人の側面がまったく感じられないし
自分自身が大事だと思ってるニュースについては深く言及するけどそれ以外では口数少ないのが信念を感じるんですね
そしてひねくれてる
頭の良さと信念を感じるのに加えて自分の性格に近いものまで感じるとそりゃあ好きよって
で、古市さんの作品はとても温かみを感じるんです
『平成くん、さようなら』も良かったんですけと今回の方が好きでしたね
窓の清掃員っていう立場から、外の世界から富裕層を眺めたり、会社を眺めたりしてると中の人はこっちが見えていないように好き勝手してるっていうのがちょっと富裕層を皮肉ってて、
さらにそれを外から盗撮することで新たな価値を見出してっていうのがひねくれてるところ感じて好き
それに家族に無理やり住むようにされてる老婆の部屋がシンプルで箱ばっかあるけどお金がだけはあってそれを盗撮の写真を買い取るために使ってるのがとても良い
人の価値観ってそれぞれで自分自身では見られないけど誰か他の人に頼めば見せてくれるものに価値を見出すのって割と当然と言えば当然のことで、そのリアルさが良い
なんかもう全体的な雰囲気が本当に好きなんですよね
完全にネタバレっぽいんですけど
最後に老婆がもらった写真と箱を使って部屋に新しく街を作り出して電気つけてっていう場面とかもう、うーわ良いとしか言えんかったわ
それぞれの価値観があるんだから自分だけの価値観で悩んでるのとかおかしいって言ってるような本で温かいものを感じるよなって思います
『奈落』と『アスクミーホワイ』も読まなきゃ