アボカドという存在を長い間知らなかった。
アボカドとの最初の出会いはたぶん高校生くらいのときに親がスーパーから買ってきたのが最初だ。アボカドという言葉を何となくは聞いたことがあった気がするが、実体を見たのはそれが初めてだ。僕の地元にはまだ大陸から文化が伝わっていなかったのだろう。渡来人が最初に須恵器を持ってきたときの倭人の気持ちがわかる気がする。
なんだこれは。皮が黒いくせに中身が緑じゃないか。緑と言っても野菜みたいに爽やかなやつじゃなくてトイザラスの海外お菓子コーナーにありそうなエキゾチックな緑だ。という印象だった。
一見すると実のようななりだし、緑色という野菜っぽい色だし、おそらく味は果実系もしくは野菜系の味だと予想した。しかしわさび醤油で食べるのが美味しいとかいう戯言がネット上にあった。仕方ない。先達を信じてまずはその方法で食べてみた。
すると、なんだこれは。血が流れてた命の味がするじゃないか。これは地上でのうのうと水を与えられて育った命の味じゃないだろ。どういう人生経験を積めばこの味を醸し出す発想になるんだという味だった。要は口に合わなかった。理解できないことは身体が拒否する質なので身体が受けつけなかった。
今や食物アレルギーのオンパレードなのであまり贅沢を言っていられない。でもどうしてもアボカドが血の気配を放っているのが理解できない。カメムシの匂いのするハーブも大概だが、あんなに攻めているやつは他にいるのだろうか。果実とかじゃない。あれは完全に果肉の塊だ。