活字中毒者の禁断症状

引きこもりが読書感想文を提出するブログ

感情を失う街、東京

東京には地元にいるときほとんど行ったことがなかった。1人で行ったのは大学入試のときで本当に色んなことを感じた。数ヶ月間まともに人と世間話とか雑談とかもせずに塞ぎ込んでいたので感覚が過敏になっていた。とにかく人とすれ違っても誰とも目が合わない。電車で人と密着状態にあってもそれは壁に寄っかかっているのとあまり変わらない感覚がある。コンビニに売っている商品の価値が値段よりも安いものに感じる。人工物と自然の境目がわからなくなっている街づくりに頭が追いつかなくなる。


ホテルで自分の部屋に入ると涙が出てきた。今の自分に住むことができる街じゃないと思った。東京の一部として溶け込むことはこの歳でやるべきことじゃない気がした。

試験を受けながらずっとどうしようかと考えた。もしここに受かっても行きたくないな。合格だけして入学拒否したいな。と考えあぐねていた。幸いなことに試験に落ちたので入学拒否の言い訳の捏造はせずに済んだ。こんな本当のこと言ったら怒られそうだったので隠していたが時効ということにする。


感情を押し殺して冷たい人になる練習をするために度々東京に行くことにした。とりあえずずっとイヤホンかヘッドホン常備で。東京の人と話す機会も何度か作って話してみたが人型の模型にその辺に転がってる感情と一頭分の欲望を注ぎ込んでできているみたいで怖くなった。逆効果だった。


でも僕は成長した。東京出身の人でも感情が豊かな人も多いことに気がついた。街中でそんな人になかなかお目にかかれないのは似たような感情を抱いて雑踏を避けていたり、基本家にいたり、取り繕うのがうまくなったりしてるだけなことに気がついた。それに昼間に街を歩いている連中のロクでもないやつ率の高さにも気がついた。


まだまだ東京は怖い。都会は怖い。でもそんな街もあっていい気がしてきた。今だったら神経すり減らしながらでも住むことができる気がする。怖いけど。