活字中毒者の禁断症状

引きこもりが読書感想文を提出するブログ

【読書感想文】石黒くんに春は来ない / 武田綾乃

武田綾乃さんの作品はシリーズ作品以外やと『その日、朱音は空を飛んだ』以降は読んでる

BOOKOFFで見たことないやつある

→読んだ


武田綾乃さんの小説って割と個別で似ている雰囲気を纏ってるイメージがなかったんですけど『石黒くんに春は来ない』は『その日、朱音は空を飛んだ』に似てるのかなって思いましたね

発表順で考えると作品の幅が広がってるのかな


内容は、石黒くんがスキー合宿で行方不明になった後見つかって入院して、学校に来るまで『石黒くんを待つ会』というLINEグループを作ってみんなで待とうよって言い始めたクラスの中心人物たちとその人たちに不満をもつ人たちのいざこざミステリーって感じ


グループLINEがリアルなんよな

クラスの中心にいないと言葉発しづらくて結局ヒエラルキー上の人らだけが話す感じでね

その縮小版では同じ友人グループのなかの他のメンバーの悪口言うみたいな


悪びれる素振りも見せずに自衛ばかりするクラスの中心人物とそれのアンチになりすぎて結局いじめる側になってしまってる人らのパラダイムシフト的なことが起こるんですけど実際そんなことってあるんですかね

結局それぞれの役割に合う合わないがあるからクラスの中心を引き摺り下ろしてもクラスの中心になる器じゃない人が代わりに君臨するみたいなのって良くない結果を生み出すだけな気がするんですよね

クラス単位でも国単位でも


あと学校が楽しくて頭お花畑のまま教師になったやつにろくな奴いないっていう毒を孕んでる気がしたけどそれは共感やなぁって


読後に強烈な不快感が残る感じ、カールとかカルピスみたいな、本当武田綾乃さんの魅力ですね












【読書感想文】ファーストラヴ / 島本理生

島本理生さんの作品BOOKOFFにいっぱいあるな

島本理生 オススメ 検索

→第1位 ファーストラヴ

→おっ、あるやん買ったろ、で、読んだ


映画化されたばっかりなのを全く知らなくて、急ににわかになったやつみたいで恥ずかしい


内容は、実の父親を殺害したアナウンサー志望の女子大生のことを本として執筆するために事件のこととか心理状態を面会で探っていく心理カウンセラーの話で、かなり好きだった

今まで読んだの本の中で5本の指に入る


最初はどうなんだろうなって思ったんですけど、たぶんめちゃくちゃ時間かけて取材したんだろうなって思うほどほんとにリアルで繊細で

小説読んでて、この場面、この性格で、この動き方だったり、この言葉のチョイスだったり、語尾のテンションだったりするかなって違和感を覚えることがとても多いんですけど

それが一切なくて綺麗だなぁって思いましたね


ワイドショーで事件のニュースを取り扱うときに信じられない、狂ってるみたいなこと言ってたり、暗めな人を悪く言ったりするのが苦手で

っていうのも、人の心の闇の部分って先天性のものはわずかで大体が後天的なもので、その原因は他の人から受けた恥辱とか嘲りとかがほとんどだと思うんですよね

でも、実際に事件を起こした人の心理状態とかは無視されて報道されないことが多いのが、各々の娯楽として消化するために人を吊し上げてる感じがして


この本には全体通して1人の人の心に向き合っていてなんか嬉しかったな

自分が嫌だと思うことってどんなことでも過去の事象に起因してるんかもしれないな

って改めて考えると自分でも嫌だと感じていたものはあれが原因なのかな

とか考えられて楽しかった


心理カウンセラーって素敵な仕事だよなぁ









【読書感想文】傘をもたない蟻たちは / 加藤シゲアキ

短編小説読んで正直あんまりだったな

でも今年直木賞にノミネートされたし、本屋大賞にもノミネートされたし作品読んでみようかな

→『ピンクとグレー』を読む 最高

→『閃光スクランブル』を読む 最高

→『Burn』を読む 最高

→じゃあ読もっ、で読んだ


加藤シゲアキさんの小説は本当に面白いなって1作品目から3作品目までを読んで思って、ただこの『傘をもたない蟻たちは』っていうのは短編集なんですね

『行きたくない』っていう短編集の作品が個人的にそこまでだったんで、ちょっと不安だったんですよね

ただ本当に面白かったですね


どれも好きだったんですけど強いて言うなら『イガヌの雨』と『染色』が良かったかな

いやでも、『にべもなく、よるべもなく』も良かったし、『インターセプト』も『Undress』も『恋愛小説(仮)』もって言い出すと全部だからとりあえず2つについて


まず『イガヌの雨』について

最初イガヌっていう食材が出てきて、

うわー教養のなさ出たー、知らん食材メインの話やんって思ってたんですけど架空の食材なんですね

それを食べると他のもの食べたくなくなるみたいなやつなんですけど

見た目が猿とコウモリの中間?みたいな感じで頭で浮かぶ奴が相当気持ち悪くて

でもみんなそれにやみつきみたいな

薬物中毒みたいなことなんですよね

よく大麻の写真見るんですけど大麻もめちゃくちゃ気色悪いですからね

でもそれにやみつきになる人間どもっていうので人の醜さがとてもよく表現されていて好きですね


次に『染色』について

これは美大生の恋愛の話で

彼女がいるのに惹かれた作品の作者の女性と浮気するみたいな話

これが好きって言うのが、美大生の浮気相手的な立場の人がいつも腕にカラースプレーで色をつけてるってところが好きで

そんな人実際には見たことないけど本当にいそうだなって

一種の依存とか中毒の類で、自傷癖に近いのかなって

そういう人が魅力的な作品を作り出すっていうのもなんとなくわかる気がして

そういうリアルさが好きでしたね


ただ加藤さんの小説ってまあまあ性表現が出てくるんですね

『染色』みたいにテーマがそういうときは話の流れ的に必要なんでわかるんですけど

テーマが違うことのときには出さなくていいかなって思う時がときどきあるんですよね

っていうのが、作家として好きだからちょっと心配になるんですよね

問題起こさないでくれよって


次は『チュベローズで待ってる』だ



【読書感想文】流浪の月 / 凪良ゆう

2020年の本屋大賞10位だった『むかしむかしあるところに、死体がありました。』っていう本を読んで、面白いけどこれが10位なの?そんなわけなくない?もっと上じゃない?って思って

なら1位とやらを読んでやろうじゃねえか

絶対面白いとか思わねえからな

で、読んだ


結論から言うと今まで読んだ本の中で一番好きだった

これまで『かがみの孤城』が一番で、伏線回収とかの綺麗さとかはやっぱ敵うものはなかなかないと思うけど、『流浪の月』はそれとは違う良さがあって大変好きだった


内容は世間的には女子児童誘拐事件の加害者と被害者の話

必ずしも世間的な悪と実際の悪はリンクしなくて、世間的な悪が実際の善であることもあるし、逆に世間的な善が実際の悪であることもあるって言うこともあって

多くの人は実際のところを見ようとしないうちに表面上だけで善悪を判断してるみたいなメッセージがあると思うんですけど

もうほんとにそう

って

本当のことを聞いてくれる人ってほんとにわずかしかいないよな

っていうのが共感の嵐吹き荒ぶ


主人公は家庭が嫌で大学生のところに行ったのに、大学生は逮捕されて家族のところに戻されて

その事件をきっかけに被害者とされた主人公も加害者とされた大学生も社会からしたら異質な存在で好奇な目で見られてみたいなのが、もうほんとにそれが言いたいってなる


表面上でだけ善人ぶってる奴を世間は善人とするんだよな、悲しいことに

でもこの本のおかげで心が救われたような気持ちになる人っていっぱいいるんじゃないかなって

本読んでるだけなのに自分の意見に共感された気持ちになってとても嬉しかった

最後にはちゃんと分かってくれる人もいるにはいるっていう救いもあってそこがまた美しい


ただこれが本屋大賞1位の割には生きづらい世の中やなって思ったんですけど

生きづらさを作り出してる人が本を読まないってことなのか、はたまた本を読んでも何も思わないのか


なかなか難しいもんですねぇ



【読書感想文】ふがいない僕は空を見た / 窪美澄

ARTIFACT OF INSTANTっていうバンドの『不甲斐ない僕らは空を見上げた』っていう曲が好きで、どうやらそれによく似たタイトルの小説があるみたいで、しかも時代的にそっちが前みたいでっていうのを知って買った

webで調べたらR18の作品賞受賞してるし、あらすじもちょっと過激な感じだったけど本屋大賞2位でもあるって最近の本屋大賞ではない感じやなって思いますね
短編ではないのかもしれないけど章ごとに主人公変わるから短編っぽいっちゃあ短編っぽい

内容は人のふがいなさについてってことなんかな
主婦と不倫してる男子高校生、男子高校生を買春してる主婦、その男子高校生が好きな女子高校生、その男子高校生の友達、その男子高校生の母親
こうやって書くと一応この男子高校生が主人公なんかな、全体の
桐島に似てる気がする

R18であることもあって最初の過激さよって
何ひとつ包み隠さない感じで、潔くてカッコいい
登場人物それぞれの人間味とか弱さとかがとてもリアルで、法には触れていることもよく出てくるけどそれが犯罪者として捉えられなくて自分ごととして捉えられましてヒリヒリしますね

この本の中でどうしようもない団地が出てくるんですけど実際どうなんですかね
団地って人が家族単位で収容されてるみたいな感じあって怖いイメージあるんですけどそうでもないんですかね
人との距離感が近い分確かに空気感は少なからず伝播しそうなのはありますよね
対人恐怖症には厳しいですね

起承転結ははっきりしてなくて純文学っぽさもあるんですけど読みやすくて
でも一冊の本にふんだんに犯罪が取り入れられてて
程よい毒を摂取したい時には良いですね





【読書感想文】かか / 宇佐見りん

今年の芥川賞宇佐見りんさんかー

って歳下やんけ、マジかよ

推し、燃ゆ 読もっ

→凄い、でも推したことないからわからんこと多い

じゃあ、かかも読もっ

で、読んだ


純文学を読んだ感想ってだいたい

1位 困惑

2位 当惑

3位 疲弊

だったんですけど

これはなんかキリよく終わってくれた感あって良かったですね


内容は壊れたお母さんと嫌なやつとの3人暮らしでもう疲れた、神頼みって話

(語弊ありそう)

誰かの感想で文体と内容の一致が見事ってあってその通りやなって思います

宇佐見さんって神奈川とかの出身で方言とかたぶんなかったところの生まれだと思うのにすごくナチュラルに方言を埋め込むし、さらにそれがお母さん独自の方言ってことで違和感なく受け入れられて話の妨げに全くならない


『推し、燃ゆ』もなんですけど、SNSが純文学に出てくるって他の人の作品ではまだ見たことないのに取り入れ方が上手いですよね

鍵アカで何人かだけフォローし合ってリプライとかメンションとかしてない状態でツイートしてるけど会話してるみたいな、あの嫌なコミュニティは確かに純文学的だよなって思いますね


ほんとTwitterでグループみたいなの作ってそこにいない人の悪口めいたこと言う人たちとは一生仲良くなれないと思いますね

『互いの傷を舐め合う会』とか『人の悪口を言い合う会』とか『揚げ足取り小心者』とかのグループ名でLINEグループ作って堂々とやれやって思います


あと鬱病とか認知症とかって残酷なまでに人を変えるし、その時の絶望感ってとても苦しいからそれを表現してくれている『かか』みたいな小説はなんか心の拠り所になってくれますよね


現代の嫌なところをリアルタイムで捉える作家さんとしてとても稀有な気がするので今後も楽しみ






【読書感想文】恋に焦がれたブルー / 宇山佳佑

宇山佳佑さんは数少ない全作品読んでる作家さんだから、新刊が出るってなって、発売日に本屋行って買って読んだ


宇山さんの小説はめちゃくちゃ好きで読んでるってよりは、感動する!っていう宣伝文句を見て誰が恋愛小説なんか読んで感動するかよ、望むところだって思って読んでますね

今のところ全敗なんですけどね

特に『この恋は世界でいちばん美しい雨』のときは喘息かひどい時に号泣してしまったから過呼吸なりかけた


靴職人になりたいっていう主人公が好きな青緒さんっていうヒロインに靴を作るんだって話

タイトルの恋に焦がれたブルーってドドド直球ですね

恋に焦がれるってところから着想を得たんかなって

話の流れは『桜のような僕の恋人』と『この恋は世界でいちばん美しい雨』の中間って感じなんかな


宇山さんの小説って最初の100ページくらい何これって思うんですよね正直

ただ最後の展開がいつも怒涛で泣いちゃうんよな

で、今回も泣いたんですけど

どうしても気になる点はあるんですよね


まず主人公が精神的にやられたときとか衝動的になったときのモラハラがどうしても気になる

恋愛小説になると仕方ないんかな

もし自分がその場にいたとしたら主人公嫌いになるわってときがちょっとあって周りの人の存在を考えると完全に綺麗なシーンとして受け入れられないなって


あと幼馴染が良い人の割に報われてない感が気になる

めちゃくちゃいい子なのに可哀想だよって思ってしまうんですよね

主人公たちの展開に良いように使われてる感が自分のこととして考えるとなんかなぁって


そういう点やと『君にささやかな奇蹟を』とか『今夜、ロマンス劇場で』とかは捻くれ者からしても読みやすかったなってなるけど他の作品ほど泣いてはないなってなってバランスって難しいな


もちろん全部面白いけど