活字中毒者の禁断症状

引きこもりが読書感想文を提出するブログ

【読書感想文】あなたに安全な人 / 木村紅美

あらすじ

教え子のいじめに気がつかず自殺に追い込んでしまったかもしれない元中学校教諭の妙は教職を辞め、一度東京に出たものの里帰りし静かに暮らしていた。しかし子どもの父親の気配を感じ1人で暮らしづらくなった妙は男を雇うことにする。男もまた住民活動で一人の人間の命を奪ってしまったかもしれない過去があり、2人は1つの家で顔も見ずに過ごしていき…という話

 

木村紅美さんは芥川賞候補にもなったことがあるのでもともと知ってたんですけど読んだのは初めてですね

テーマや状況が絶妙で良かったな

全体的に仄暗い雰囲気と現実離れしすぎないほどの非日常的な2人の同居生活が相まって

特異的な小説の世界観で好きだったな

 

では具体的に良かったところを2つほど紹介

まず1つ目は

被害者への贖罪

妙と男は2人とも確実に悪意をもって人を殺害したわけではなくて

そもそも実際に自分が原因で被害者が命を落としたのか確信はない状態

それでも2人は自身の過去を悔やんでいて

自らの生活が退廃的なものになってしまっている

っていうのが苦しい

客観的に見ても2人の立場はそれほど責任を取りすぎてはいけない気がするんですよね

男の場合は先にやられたのにそれを肯定することになるし

妙の場合は親が感じるべき責任を転嫁することを許容することになる気がして

 

2つ目は

2人の日陰ものの寄り添い

人と人の相性というか

互いに求め合う関係性っていうのは

人の明るさとか暗さどころか

性格や趣味嗜好に関係なくて

時間と状況によって異なる

その時間や状況との当てはまり方が深い人が偶然友人や恋人になれば幸せだねって思うけど

必ずしもそうなるわけでもそうなる必要もなくて

ただお互いを必要としてるだけの関係性も

それはそれで良いんじゃないかなあ

ってこと考えたな

 

だから人と人の関係性って

色んな物事を基準として上下に見ることはできるけど結局見ても良いことないよね

って思ったな

 

いやー良かった

掲載された雑誌持ってんのに単行本買ったのはちょっと後悔してだけど後悔がなくなるくらいの読書体験