芥川賞受賞作
あらすじ
会社員の二谷は、体が弱い芦川さんと付き合っている。だがある日押尾さんに一緒に芦川さんにいたずらをするように誘われて、二谷は押尾さんと一緒に芦川さんに嫌がらせを始める。芦川さんは仕事を早退することも多いのにしょっちゅうみんなのためにお菓子を作ってきて…という話
全然おいしいごはんを食べようみたいな感じじゃなくて食べ物を捨てまくってて面白かった
共感度がめちゃくちゃ高い
大きな展開や出来事はあまりないのにこの面白さを引き出すことができる筆者はすごい
他の作品も読みたいですね
では具体的に良かったところを2つほど紹介
1つ目は良い人を良い人と言わなければならない風潮への皮肉
目に見える形の善意が重視されて
目に見えない善意を無視するっていうのはすごく感じることが多いんですけど
それを仕事は人任せにするけどお菓子を作ってくる芦川さんと
お菓子を巡って嫌がらせをするけど仕事は芦川さんの分までする押尾さん
っていう関係性から描いていて心地いい
その風潮がこの話の中で馬鹿みたいだという視点で描かれているのが読んでてスッキリした
2つ目は二谷の人間性の掴めなさ
主人公の二谷の言動がとても不思議
二谷は押尾さんに本心を曝け出しているのに
付き合っているのは芦川さんで
芦川さんに苛々したり、食べ物を捨てたりしているのに別れようとしているどころか
好意を疑っていなくて
これは結婚という制度へのアンチテーゼなのか
何なのかが解釈しにくい
2つの矛盾する心を抱えていて
人間らしさは感じるんですけど
一方で底知れなさも感じて少し怖い
押尾さんがメインじゃなくて二谷をメインに描いているのもまた不思議な感覚になって面白かった
事前にタイトルと内容の差がすごいみたいな話は聞いていたんですけど思ってた以上に違いましたね
皮肉めいたことをごはんを通じて述べていく様子にハマった
読みやすいし、スッキリするし、面白かったですね