村上春樹さんの3作目
あらすじ
広告代理店を相棒とともに経営する主人公はある日、ある広告を差し止めるように要求される。その広告に使われた写真は旧友である鼠が送ってきた、羊が写っている写真だった。そして主人公は写真の羊を見つけるように言われ、ガールフレンドとともに北海道へ向かう。そこでたまたま泊まったいるかホテルで羊博士と出会い、羊がいる場所を突き止めるが…という話
村上春樹さんの小説は『ノルウェイの森』がすごく好きだから他の小説を読んでもピンとこないことが多かったんですけど今作でやっと読み方がわかった気がする
村上春樹さんはとても評価されているし
教養に富んだ文章だから
身構えて読んでしまってたんですけど
そういう文章のなかにファンタジーが織り込まれているのが魅力だから
あまり堅苦しく読まない方が楽しめるな
って思いました
では良かったところを2つほど
1つ目はいるはずのいない羊について
ここがまず一番の魅力だと思うんですけど
主人公はいるはずのいない羊を探しに行って
行き着いた場所で羊が概念的なものだと暗示されている
羊が身体の中に入ることでその人の影響力が強くなるが、様子もおかしくなって、羊が抜けていくとその人は抜け殻のようになる
このことは色んなことを暗示している気がする
人が権力を持って別人のようになる
その結果人間関係とかが変質して
やがて権力を失う
っていう盛者必衰の流れを羊を介して説明しているような
でもそれがなぜ羊なのかっていうのがわからない
どうしてその目に見えないものが羊に仮託されているのかが気になる
2つ目は鼠と主人公の関係性
暗い部屋の中で鼠と主人公が出会う場面で
主人公の感情が初めて読み手に伝わってくる気がする
村上春樹さんの作品中の主人公は感情が伝わってこないことが多くて
今作でも直接的な感情表現は少ない気がするけど
何故か鼠と再開する辺りの悲哀が伝わってくる
文章で溢れるような感情の描き方が出来るのはさすが村上春樹さんなんだなって思った
今作を機に村上春樹さんの作品はより楽しめるようになる気がするけど
ちょっと『1973年のピンボール』を先に読まなかったことは後悔
さすがに順番に読んだ方が良かったんだろうなって思いますね
まあいずれにしろ色々読もう