文藝賞受賞作
あらすじ
とあるサラリーマンの山本は、焼き鳥が串に刺さっているのを見て、地球に穴を開けることを思いつく。そして日本からブラジルへ温泉を掘る技術を使って穴を貫通させるプロジェクトが始まった。広報となったサラリーマンの鈴木はいつか公表するその時のために穴に関する歴史や出来事を記述していく…という話
こんなに現実からかけ離れたことを書く小説もめずらしいし
すごい大変やったやろうなって思う
正直穴を計画して掘って中止になって終わる感じだと思ってたからここまで書き切るのもすごいなって思いますね
この主題で綺麗に終わるんだって驚いた
では具体的に面白かったところを3つほど
まず1つ目はサラリーマン鈴木の人生
大規模でとんでもない計画に携わっている鈴木なのにその活動は地味で
あってもなくても世の中には何の影響もない仕事で
それに人生をかけているというのが
サラリーマンというものを正面から書こうとしていて好き
ずっとたいしたことのない日常なのに最後の最後に陽の目を見る展開も含めて良い
2つ目は石井さんと鈴木の出会い
内定辞退した石井さんの代わりに鈴木は広報の職についていて
その内定辞退した石井さんに後々会う展開が漫画みたいな熱さがある
もしかしたら鈴木の人生をそのまま歩むかもしれなかった石井さんと鈴木が数十年ぶりに会うというのが
長い人生を描いているからこそ感動に近い感情を引き起こしてくれる
3つ目はフィクションの大風呂敷のオンパレード
とにかくこの本の面白さはここに尽きると思うんですけど
まず穴を掘るのが大嘘で
そこでブラジルと日本にどっちも広報がいたり
他の国のお偉いさんが視察に来たり
予算の都合で打ち切りになりそうになったり
っていうすべてフィクションの展開を作り出してるのがすごい
おおまかなところはすべてフィクションなのに
詳細なところがとてもリアルっていうことで話を支えているから違和感なく読み進められるのがとても良い
本当に0から全てを作ってる小説だなって思います
発想力と想像力がすごい
これの別バージョンみたいな小説も読んでみたいって気持ちにはなるんですけど
あまり現実的じゃないよなぁ
それこそ
面白かった