活字中毒者の禁断症状

引きこもりが読書感想文を提出するブログ

【読書感想文】旅する練習/ 乗代雄介

芥川賞候補作で三島由紀夫賞受賞作

 

あらすじ

コロナ禍となり、小説家の叔父は学校が休みになった小学6年生の亜美とともに鹿島までの旅に出る。叔父は川沿いを歩き、自然を描写する練習しながら、亜美はサッカーボールでリフティングの練習をしながら歩く。途中女子大生のみどりさんと出会って3人で旅をすることになり…という話

 

タイトルめっちゃ良い

乗代雄介さんの作品初めて読んだんですけど

評判が良かったので読みやすく軽い感じかと思ったら

とても渋くて、素朴

この良さはまだまだ分かりきれてない感じがあるなぁって思いました

でも面白かった良かった

 

1つ目は、自然という日常に溢れたところに徹底的に向き合うことで描かれる非日常性

正直ここを楽しみ尽くせてない感じはあるんですけど

この本は自然の様子を描写するところが多いんですね

自然を描写するという切り口は同じなのにその時々に見ている景色の描写は全く違う

使い回しの表現みたいになっていないのは労力いるよなって思いますね

時間的にコロナ禍で時間が余り始めた時期だから

時間をかけて1つのものに向き合う姿勢が合う

っていうのもまた良いところですよね

もっと時間があるときにゆっくり味わいたい

 

2つ目は、不確定の未来に進むことと長時間の旅の照らし合わせ

亜美は中学入学を控えていて、将来的にはサッカー選手になりたくて、

みどりさんは就職を来年に控えている大学生で

っていう人生の転換期にいる2人が

その先の未来のことを思いながら歩いていく様子が長時間の旅そのものと照らし合わせられていて良い

そして物語が終始不穏なベールに包まれているような書かれ方をしていて

それが最後につながっているのも構成としてすごいと思う

 

3つ目は、亜美のすべて

結局この物語の1番の魅力なんですけど

とにかく亜美の魅力がすごい

陽気過ぎなくて、無邪気過ぎなくて

小学6年生で1番良い塩梅に魅力的な人間として描かれていますね

叔父との仲の良さを文として書くのではなくて会話の冗談の通じ合い方とかを通して

演出しているのが良い

とにかく良い

 

乗代雄介さんの作品はどれもタイトルがとても惹かれるから気になっているものも多いんですけど

今回の作品を読む限り人の魅力を描くこととか一つの物事に打ち込む様子とかを描くのが上手いのかなって思うんで

より一層他の作品読むのが楽しみ