森見登美彦さんの作品で1番好きかも
あらすじ
佐山尚一という男が書いた「熱帯」という作品は最後まで読まれたことがない。そんな不思議な本の真相に迫る沈黙読書会という集まりがあった。白石さんはその会に参加することになり、周りが覚えていない熱帯の部分について語る。「熱帯」の真相に迫り始めたとき、会の一員であった千夜さんが京都に行ったきり、失踪して…という話
この本の構成を見たことがない
森見登美彦さんのキャリアで構成からこんなに攻めてしかも面白いのすごすぎる
18歳の野望の持ち方してる
似ている作品とかも思いつかないけど
強いて言うなら1番近いと思ったのは森見登美彦さんの『夜行』で
全体的な雰囲気だと円城塔さんとかに近いんかなって思いますね
では具体的に面白かったところを3つほど
1つ目は魔王によって作られた世界の話
これは3章以降なんですけど
いきなり誰視点かも分からず、2章までとのつながりも曖昧な話が始まって
そこで虎になる男が出たり、海に人の石像が沈んでいたり、それまで見えなかった島が見えてきたりと一気に森見登美彦さんっぽさも含んだファンタジーが始まって
それまでの話のリアリティとかと合わせるとその世界観のファンタジー加減がとても良い塩梅で良かった
2つ目は佐山尚一のいる世界といない世界
2章までは佐山尚一がいない世界でそこに熱帯という物語だけが残っていて
3章以降は佐山尚一が出てきてしかも1人の男でなくて不特定多数の存在のように出ている不思議さが良い
簡単に言うとパラレルワールドなんですけど
行ったり来たりせずに完全に分断された2つの世界を書いているからこそより面白い
3つ目は熱帯が語られた背景
最後の方で急に視点がどんどん変わっていって
でもその話にはどれにも熱帯という物語は出てきて
今村夏子さんの『木になった亜沙』で割り箸視点で所有者が変わる様子が描かれるところがあるんですけど
それに近い感じだけどより曖昧な繋がりで
訳わからないのに魅力を感じた
謎だ
面白いんですけど
ちゃんと理解しようとするとめちゃくちゃ難しい気がしますね
ただこれが本屋大賞の上位になってるのが嬉しい
こういう一風変わった物語が評価されていくのは良いことだよなぁ