活字中毒者の禁断症状

引きこもりが読書感想文を提出するブログ

【読書感想文】滅びの前のシャングリラ / 凪良ゆう

2021年本屋大賞ノミネート作


話は、

一ヶ月後、地球に小惑星が落ちて人類は滅びる

いじめっ子のクラスメイトを石で殴りつけた男子高校生、面識のない大物のヤクザを殺したヤクザ、父親から子どもを守るために逃げた母親、恋人を殺した人気アーティスト

それぞれの生きづらさを抱えた人々が一ヶ月後に迫った終末を前に足掻いて生きていく…という話


世界が滅びる系の話って個人的に伊坂幸太郎さんの『終末のフール』が最高傑作だと思ってたのであまり読む気にならなかったんですけど

いやーこれも良いわ

凪良ゆうさんの作品は日常に即していて大衆文学と言われるタイプの小説だと思うんですけど

自分みたいな奴にもちゃんと物語がそのまま伝わってくるほど綺麗すぎなくて読みやすい

そして登場人物たちが孤独感だったり、劣等感だったりっていうものをそれぞれに抱えてるから共感しやすいですね


今回だと美少女と言われる外見をもっていながらも養子だから実子との愛情の差を感じている人物だったり

人気のアーティストだけど人を信用できなくなって感情の所在もわからなくなりつつある人物だったりと

客観的な見られ方と主観的な感じ方がどちらも併せて描かれてて人物としての魅力がすごく感じられますね


一番好きなところは

そば屋の店主を巡るあれこれの描写で

いろんなことが非日常的に起こるのにそこから感じるものはとても人間味を帯びていて

非日常だからといって犯罪を犯罪のまま捉えさせる書き方してるのはすごいなって思うし

相手の立場まで考えるようになってるのは凪良ゆうさんらしさなのかなって思いましたね


他から見ると平和的な一家に見える人たちの様々な葛藤とか境遇とかが世界が終わるということで疾走感をもって目まぐるしく変わっていく様子っていうとちょっと違う気がするけど

まあとにかくそんな泥臭いけど爽やかな印象の小説でとても好きだったなぁ