ちょっと前の芥川賞受賞作
話は、会社で新しくビットコインの採掘を担当することになった主人公。その主人公の周りにはキャリアウーマンの恋人と小説を書きながら同じ会社の違う支店に勤める元上司のニムロッドがいて、彼らとの関わりとニムロッドの小説やメールを照らし合わせながらビットコインについて考えるような、そんな話
この小説の紹介文みたいなのってどれもビットコインの話って書いてあるんで
ビットコインについて何か学べるかなって思ったんですけどメインはビットコインに対する主人公の思いとかなんでそこには焦点当てられてなかったですね
ただ価値について考えさせられる内容になっておりまして
高いビルがビットコインの価値の膨大さ?、駄目な飛行機っていうのが人の主観による価値判断、人々が1つになるっていうのが代替可能なものの価値の比喩になっていて
ビットコインという実体のないものの価値というのを色んな面から捉えているような気がしましたね
あと主人公が感情と関係なく流す涙が人間らしさを剥奪されつつあることを暗喩してる気もして全体的に仄暗い近未来の世界を感じさせるような世界観ですね
ただ正直まだ納得しきれていないところもありまして
恋人が睡眠薬がないと眠れないところとか最後に連絡つかなくなるところとかをどう捉えればいいのかがわからなくて
また読み返さないといけない本なのかなとは思いますね
芥川賞にしては性表現とか暴力とかあんまりなくて珍しく近未来っぽいけど
不穏というか空虚というかそんな退廃的な雰囲気も漂っている作品で
空気感は好きだなと思いましたね
その分捉えきれてない感が悔しい