活字中毒者の禁断症状

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【読書感想文】最後の息子/ 吉田修一

芥川賞候補作の『最後の息子』、『破片』、文學界新人賞候補作の『Water』からなる作品集

 

ここでは『最後の息子』と『破片』について紹介

 

最後の息子

ゲイである僕は、同じくゲイの閻魔ちゃんと同棲をしている。ある日、同じく店の常連客であった大統領は公園でゲイ狩りによって殺されてしまう。僕は、大統領との思い出を綴った日記を読み返し、閻魔ちゃんとの日々を振り返り…という話

 

『破片』

東京に住んでいる大海は、長崎の父と弟の岳志が住む実家に帰省する。幼い頃母親を失った彼らは女性への接し方がわからず、大海は風俗で働く彼女に強く言えず、岳志はバーで働く女性に入れ込もうとしてしまう。大海は岳志が家を作りながら酒屋を手伝い、バーの女の子に入れ込んだ生活を送ることを知るが、ある時その女の子に弟との関係についての悩みを聞かされて…という話

 

吉田修一さんってめっちゃ良いですね

パークライフ』があんまり印象強くなかったからそんなに積極的に読もうとしてなかったんですけど一つひとつの話がちゃんと面白いし

連続して読んでも共通してるところは少ないし、それぞれの話でちゃんと背景とか人物像が繊細に描かれているから読みやすい

 

では具体的に良かったところを2つほど紹介

1つ目は行く宛のない恋

これは『最後の息子』の方で僕と閻魔ちゃんの関係を通してゲイとしての恋心っていまいち消化しきれない部分があるよなって思いましたね

異性愛なら結婚っていう一区切りはあるし

身体的な構造としても一応区切られてる感あるけど

ゲイって社会的にも身体的にもいまいち納得しきれない感じみたいなのがあるだろうなって思ったな

結婚なんて生き方を与える制度の一つに過ぎないんだから同姓同士の結婚も徐々に保証されていっても良いもんだけどね

色んなシステムや制度の作り直しは大変そうだけどそれである程度の納得感が剥奪されないなら良いと思うよなあ

 

2つ目は女性への優しさ

これは『破片』の方ですごく感じたな

女性が身近にいなかったことで女性への優しさというものがわからなくて空回りして

相手にむしろ負担をかけてしまうっていうのがめっちゃわかるところがあるな

男女問わず優しさそのものについて人によって定義や捉え方が異なるから想像力だけで接してしまうとそこに齟齬が生じる

自分が優しさだと思ってることでも相手にとっては冷酷さになったり重い愛情になったり

本当に難しいから適度に対話しなくちゃいけないよな

対話力ってそういった意味でもとても大事だな

 

あと吉田修一さんの作品で持ってるのは『熱帯魚』だな

読まなきゃな