あらすじ
責任を無化する巨大企業CF。そこに勤める野村。両親が殺害された過去を持つ幸の薄い水商売の女の恵。CFの爆破を目論む森崎。野村の妻と大学の同級生の平野。彼らの人生はCFにより攪拌され、吸収されていく…という話
語り手みたいなのが特定の人物ではなくて多くの人の視点が変わる話で
あえていうなら主人公はCFそのものっていう感じ
吉村萬壱さんの作品って心地良い気持ち悪さを感じられるからよく読むんですけど
また新しい意味での気持ち悪さを感じたな
では具体的に良かったところを3つほど紹介
まず1つ目は、野村という男の存在
野村はこの話の面白さの核になってる気がする
野村視点での人間らしさと恵視点でのおどろおどろしさが共存してんのがいい
猟奇的な人物って描かない部分で魅力を引き出されるところがあることが多いと思うんですけど
人間的に書くことでキャラじゃなくてちゃんと人物として成り立ってる感じがするのが良いですね
2つ目は、CFの実態
CFの幹部の視点でも描かれてるんですけど
実態がほとんどなくても見せかけであるように見せるっていうのが
会社とか社会全体でも横行しまくってるのを身をもって感じることが多くなったから
この状態がとても納得できるし
見せかけだけのものを内側から見たら馬鹿みたいだけど外側から見たらそれが見せかけとは気づかない感じが絶妙に気持ち悪くて良いですよね
3つ目は爆発計画を企てる森崎と恵の関係性
愛情の形って色々あるんだろうけど
お互いの視点でお互いが惹かれてるところがわからないのって不思議だったな
CFという企業への復讐心への共感が2人の距離を近づけるのはわかるけど
それだけで人って惹かれ合うことができるのかな
人によって人と一緒にいたいと思う理由の出自って自分が思ってる以上に多様なのかなって思いましたね
自分自身が欠乏してるような気がしている時に誰かと一緒にいたい思いが先にあって
たまたま欠乏してる部分に何となく合う形の人がいたから一緒にいることにするっていうような
消極的な思いが人を繋ぐこともあるのかなあ
それを愛情って言って良いのかわからないけど
自分には考えられないような心情を考える良い機会だ
吉村萬壱さんの作品絶版になってるものが多いからあんまり読めてなかったんですけど
久しぶりに新しく買った本あるから読まねば