あらすじ
女子高校生のかんこは学校にいても授業には出ずにふらふらとして日々を送っていた。ある日、祖母の訃報が届き、父と母と3人で祖母の家へ向かい、車中泊をすることを決める。常軌は逸してないものの時に暴力的で残虐になる父と酒を飲むとヒステリックになる母との車旅のなかで、弟と兄が出て行った家庭の内情が明らかになっていく…という話
ひっさしぶりに宇佐見りんさんの小説読んだけどやっぱり上手だなって思いますね
些細な心情を描き出す筆致と地の文の豊かな表現力で読んでて飽きない
それに合わせてこの絶妙に重いテーマがとても良いですね
好きだわ
では具体的に良かったところを3つほど紹介
まず1つ目は
毒親の描き方
ヒステリックな母親と暴力的なところがある父親をわかりやすく書きすぎてないのがとても良い
2人とも悪人なわけでもないし、ちゃんとした家庭を築こうとして結婚したっていう背景も想像できるのに兄弟が家から出て行っているって事実によって確かに欠けている部分があることははっきりさせているバランス感がとても好きだった
2つ目は
車中泊ならではの出来事の数々
この作品のなかのターニングポイントだったり、両親の衝突だったりっていうのが車中泊をするこの登場人物たちじゃないと起こり得ない出来事で構成されているっていうのがすごく良い
車中泊するって仲良い家族の感じがあるけど
風呂トイレに気軽に行けない
歯磨きがいつも通りにはできない
ゆっくり寝られない
が揃ってるストレスのオンパレードだから
仲良い家族が手を出すと痛い目見る要素揃ってて
本当に仲良くないとその実態が曝け出されてしまうものだと思うから
このテーマにはとても合ったものだよなって思う
すごい
3つ目は
主人公の立ち場
兄と弟は出て行って1人取り残された主人公だけど被害者って感じはなくて
劣悪な家庭環境形成する一員になってる
って自覚して責任感を抱いてるのが苦くて
人間関係は相互作用で成立してるし
でも高校生とかだと親子の関係って切るに切れないところはあるし
って考えてしまったな
主人公のかんこが家を出てしまったら家庭崩壊が決定的になってしまうからそれを防ごうとしてるのを感じて苦しくなるな
宇佐見りんさんの小説は言語化しづらい絶望を背景とかを踏まえつつ書いてくれるからとても良い
新作待ちたい