あらすじ
売れないバンドマンの音色、天才だが正確に難がある映画監督の宮部、暴力を受けて育った凛、凛に助けられる英治などの登場人物たちがお互いにいろいろな影響を与え合うが、それがいつも正解とは限らず、運命は残酷な方へ進んでいくことがあり…という話としか言えない
indigo la endのアルバムの曲タイトルがそのまま各々の話のタイトルになっている小説
主人公は変わるんですけど連作短編ではなくて
話は1つにまとまっている感じですね
他の作品と比べるのあんまり良くないかもしれないですけど
「明け方の若者たち」よりだいぶ楽しめた
登場人物を全く好きになれないのにこんなに面白いと感じることができるんだなって思いましたね
では具体的に良かったところを3つほど紹介
1つ目は凛を通した人間関係
全体を通して凛という人間が核になっていると思うんですけど
音色とは純粋な恋人として
宮部とは歪んだ依存関係の相手として
英治とは傷を癒す相手として
それぞれと深く結びつく時間があることで物語が進んでいく様子が見事でしたね
凛本人は優しいけど自己評価が低くて
その自己評価がもうちょっと高かっただけで色々違ったのかと思うとキツいところもありますね
宮部が炎上したときの反応の広がり方が
さすがカツセマサヒコさんだなっていう感じですよね
一つの事件があったときに
加害者にも被害者にも悪く言う人はいて
石を投げ込んだ池の波紋みたいに色んな人の意見が連鎖している様子の書き方がとてもしっくりきますね
この辺りの書き方はカツセマサヒコさんの右に出る人はいないんじゃないかって思わせられますね
3つ目は会ってはならない人との出会い
大きめのネタバレっぽくなるんで詳細は省くんですけど
その場でみたら運命に見える出会いでも
真逆で壊し合う関係を築くことになる関係性の可能性もあるということが書かれていて
その避けられない不幸がちょっと怖くて切なくて悲しくて
なんだかやりきれなくもなりますね
優しさがその原因になっているのもまた
あーってなる
時々読みたくなる