活字中毒者の禁断症状

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【読書感想文】夜行秘密/ カツセマサヒコ

あらすじ

売れないバンドマンの音色、天才だが正確に難がある映画監督の宮部、暴力を受けて育った凛、凛に助けられる英治などの登場人物たちがお互いにいろいろな影響を与え合うが、それがいつも正解とは限らず、運命は残酷な方へ進んでいくことがあり…という話としか言えない

 

indigo la endのアルバムの曲タイトルがそのまま各々の話のタイトルになっている小説

主人公は変わるんですけど連作短編ではなくて

話は1つにまとまっている感じですね

 

他の作品と比べるのあんまり良くないかもしれないですけど

「明け方の若者たち」よりだいぶ楽しめた

登場人物を全く好きになれないのにこんなに面白いと感じることができるんだなって思いましたね

 

では具体的に良かったところを3つほど紹介

1つ目は凛を通した人間関係

全体を通して凛という人間が核になっていると思うんですけど

音色とは純粋な恋人として

宮部とは歪んだ依存関係の相手として

英治とは傷を癒す相手として

それぞれと深く結びつく時間があることで物語が進んでいく様子が見事でしたね

凛本人は優しいけど自己評価が低くて

その自己評価がもうちょっと高かっただけで色々違ったのかと思うとキツいところもありますね

 

2つ目は現代社会を皮肉ったSNSや炎上

宮部が炎上したときの反応の広がり方が

さすがカツセマサヒコさんだなっていう感じですよね

一つの事件があったときに

加害者にも被害者にも悪く言う人はいて

石を投げ込んだ池の波紋みたいに色んな人の意見が連鎖している様子の書き方がとてもしっくりきますね

この辺りの書き方はカツセマサヒコさんの右に出る人はいないんじゃないかって思わせられますね

 

3つ目は会ってはならない人との出会い

大きめのネタバレっぽくなるんで詳細は省くんですけど

その場でみたら運命に見える出会いでも

真逆で壊し合う関係を築くことになる関係性の可能性もあるということが書かれていて

その避けられない不幸がちょっと怖くて切なくて悲しくて

なんだかやりきれなくもなりますね

優しさがその原因になっているのもまた

あーってなる

 

時々読みたくなる