あらすじ
女優になるために上京した姉の澄伽が両親の葬式で帰ってきた。澄伽は妹の清深を嫌っていてキツくあたり、兄の宍道とは肉体関係をもっている。宍道の配偶者である待子が海外に旅行に行かされたことを機に不穏な家族の関係性は拍車をかけ始めて…という話
めちゃくちゃ本谷有希子さんらしい話
人の汚さとか醜さとかを惜しげもなく発揮していてとても良い
この作品の面白かった点を2つほど
まず1つ目は清深の気味悪さについて
清深という人間は最初の方では弱い妹のイメージが強いのに後半になればなるほどその恐ろしさが強調されてきて
両親を目の前で失ったことも姉が女優になろうとしていたことも全てを自分の中に取り込んで生命力としているような感じがあるのがとても怖くて良い
人の醜さが浮き彫りにされてる
2つ目は澄伽の不安定さについて
澄伽は初めはただ怖い姉のような感じだけど
宍道に肉体関係を迫っていたり、文通を頻繁にしていたり、清深に復讐していたりというそのどれもが心の不安定さに繋がっている気がして
自分を特別な存在に意図的にするために周りを巻き込んでいる様子が
平凡さみたいなものを表していて、それが澄伽の弱さというか、心の不安定さというかに繋がっているというのが伝わってくる
人の怖さを感じられる作品で
とても読みやすいし、展開もわかりやすいので本来であれば本谷有希子さんの作品の中でも最初の方に読むような本なのかなって思いましたね