あらすじ
男性との性行為に辛さを抱く里帆は、第二次性徴を自分でやり直すために男装をして自習室に通い始める。そこでバイト先の常連である椿に出会い、その友人である知佳子とも仲良くなる。知佳子は、自分の肉体と外の世界との区別が曖昧に感じることしかできないのだった…という話
あらすじだけ見たら村田沙耶香さんのいつもの雰囲気な気がしたんですけど
ちょっと他の作品と空気感が違って
『マウス』に似た空気を感じてとても面白かった
面白かった点を2つほど
まず里帆の性への追究について
里帆は性行為を苦痛に感じることを契機として自分に合う性はどういう形なのかを模索するためにトランスジェンダーとかについて調べたり、男装したり、バイト先の女の子に手を出そうとしたり、とにかく模索する様子が細かく描かれていて
しかも最終的にもしっくりきている様子はなくて
とことん自分の性に懸命に向き合う様子がなんか良かったし、
現実的にはそうなのかなっていう風に思いましたね
2つ目は3人の立場の違いについて
里帆は自らの性がわからないけど模索する
椿は女性としての幸せを追求する
知佳子はそもそも自分が星の一部としか思っていない
っていう3人のそれぞれの立場があるから
里帆と椿がちょっと知佳子に救われるようなことがあったり
椿は里帆を逃げているだけだと非難したり
それぞれの立場の違いによってお互いに影響を及ぼし合ってるのはまさに人間関係で
それを細かく描写しているのが良かった
この話の知佳子っていうキャラクターが村田沙耶香さんの作品全体を見てもなかなかないような魅力をもっているキャラクターだなと思って
『ハコブネ』の世界観が好きになったなぁ