活字中毒者の禁断症状

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【読書感想文】黄金比の縁 / 石田夏穂

あらすじ

取引会社とのやりとりをきっかけに内部告発の容疑をかけられて人事部に異動させられる。そこで新卒採用のチームとなった小野は顔が黄金比である人物は早期に転職する法則を見つけ、会社への復讐のために顔が黄金比である就活生を採用することに決め…という話

 

石田夏穂さんの小説で読んだのが『我が友、スミス』に続いて2冊目なんですけど

読みやすくて話のテンポがとても良くて

色んな話を読んでみたくなりますね

新卒の採用担当者から見た就活っていうのも新鮮だった

 

では具体的に良かったところを2つほど紹介

1つ目は、部署の左遷と復讐

この話の主人公はもともと技術職として働いていたのに些細なきっかけで内部告発をしたと見なされて人事部に左遷された結果人事部で働いてるんですね

それで理不尽な左遷をしてきた会社への復讐心を抱いて会社にとって不利益な人たちを採用することにする

っていう展開が現実味があるし理不尽具合が会社を辞めずに復讐する主人公にちょうど感情移入しやすいのが見事ですね

 

2つ目は、会社の評価

会社は利益を追求することを目指す組織だから

そこに人としての温かさとか愛社精神とかは関係ない

だからこそ会社に復讐心のある主人公がいつの間にか評価されて

就活生に真摯に向き合っていた加藤がリストラ対象になるということがありえる

っていう会社の絶対的な基準に則った評価が描かれていて怖かったな

仕方のないことなのだけど

こういうの読むと会社の価値基準と自分の存在意義とかを重複させすぎることの危うさ感じてしまうね

所詮会社は利潤追求の組織だもんな

 

1番組織として良いのはくじ引きで出世する人を決めることですっていうのが科学的に証明されてる例にもある通り

組織と個人の感情って相性悪いよね

ってことを改めて感じさせてくれる作品だったな

 

石田夏穂さんの作品で今出てるあとの2作品も読まねばな