【読書感想文】図書室 / 岸政彦
三島由紀夫賞候補作
あらすじ
シングルマザーの母と野良猫たちと住む私は放課後、1人図書室へ通った。そこで出会った男の子は学校の男の子たちとは違う空気感を持っていた。私は彼と日常の話をしたり、本で得た知識のやりとりをしたりして親しくなっていき、2人で世界が滅亡するときのことを考えて…という話
岸政彦さんの作品で読んだのは『ビニール傘』に続けて2作目
『ビニール傘』は芸術的な印象が強くて
社会学というものを抽象的なまま小説に落とし込むのが作者の特徴なのかと思ってたんですけど
『図書室』は『ビニール傘』とは大きく変わって人間味の溢れる話で驚き
ではこの本全体で印象に残ったところを2点紹介
まず1つ目は
図書室みたいな記憶のアーカイブ
この本は幼少期の記憶を小説として昇華したような『図書室』と
学生時代や今よりも筆者が若い時のエピソードをエッセイ、私小説っぽく書いている、断片的な記憶の詰まった『給水塔』
が併録されているんですけど
本全体的な構成が記憶の断片が時系列に並んでいて
一片の記憶を一冊の本と捉えるとこの本自体が図書室みたいな構成みたいだなって思いましたね
大阪という地が舞台で年代も違うのにこういう話を読むと自身の幼少期との共通部分に誘引されるように自分の記憶も呼び起こされるから不思議だな
2つ目は
幼い日の世界の見え方
大人になると地元の狭さに気がつくけど
幼いときには地元が世界の全てで世界のあらゆる属性を些細なところに結びつけてた感覚っていうのがこの小説を読んで引きずり出された
世界を自分中心に考えてることにも気がつかずに
自分のなかで作り出した世界の有限性みたいなのを信じて楽しむことができていたことは今思うととても幸福なことのようだけど
その分辛いことがあったときの比重も大きいことを子どもと接する時に忘れてはいけないよね
って思ったな
そして大人になった今のノスタルジーも感じながら読了しました
次に読む予定の『リリアン』がどんな小説なのかより楽しみになってきたなあ