詩人の最果タヒさんの小説
あらすじ
隣のクラスの沢くんに告白して、まあいいよと言われた返事が気に入らなくて振った唐坂は男を弄んだように思われ、クラスでいじめられる流れになっていく。そんな唐坂を救うつもりの沢くんやずっとヘッドフォンをつけている初岡さんたちと学校から帰ると、家にはお兄ちゃんとお兄ちゃんの彼女の保坂と保坂の浮気相手で兄の親友の三井がいて…という話
最果タヒさんの詩集が好きでよく読んでるんですけど小説は初めて読んだ
詩のように最果タヒさんの世界観が広がっている文章も挟まれながらも
詩とはまた違った良さもあって面白かった
では良かったところを3つほど紹介
まず1つ目は
出だしの文章の魅力
『感情はサブカル。現象はエンタメ。
つまり、愛はサブカルで、セックスはエンタメ。』
これが出だしの文章なんですけどこれまで読んだ本の中で1番印象的な書き始めですよね
さすがに残る文を考えるのが上手
しかもこれがこの作品のテーマみたいになっていて
客観的に観測可能なものがエンタメで
観測可能でないものがサブカル
十代の特徴として観測可能でないものの特殊さみたいなものがある
っていうのを文章全体で訴えているようで
自分の十代の頃を引きずり出されるような感覚になりますね
2つ目は
十代の気持ちの表し方
告白されて付き合うって流れ何?告白ってそもそも何?付き合うってどういうこと?友達ってどういう関係?いじめってどういう現象?
みたいな十代がわざわざ疑問に思わないようなこと、でも上手く説明できそうにないことの疑問がこの本には溢れていてとても面白かった
そして何よりこれまで読んだ本のなかで最も十代の視点を強く感じましたね
深く考える時とあまり考えない時の思考の深さのバラつきが大きくてその感じにとても十代っぽさを感じた
3つ目は
三井と保坂の関係
お兄ちゃんの彼女の保坂は彼女が自殺した三井を元気づけるために肉体的に癒した
という事実があって
それが良いのか悪いのかを考えさせてくれるのが良かった
現象的には浮気だけど感情的には浮気じゃない
主人公は保坂の言動を拒否してるけど
お兄ちゃんはそれを許してる
これを通して十代はサブカルとエンタメ、もしくは感情と現象の距離感が近いけど
大人になるにつれて
両者の距離は遠くなっていく
っていう考えを示してるんかなって思ったんですけど
その考えは共感できるなって思いますね
十代とそれ以上では根本的な考え方が違う
だから共感するのは嘘つき
みたいなことなんやろうな
考えの比重が大きな話で読んだ感強いよなあ
考えさせられる話やなあ