活字中毒者の禁断症状

引きこもりが読書感想文を提出するブログ

【読書感想文】ここはすべての夜明けまえ / 間宮改衣

三島賞候補作

 

あらすじ

2134年九州で1人生きているわたしは父親に強く勧められて融合手術を受け、老いることなく生きている。父親が死んで、こうにいちゃんまりねえちゃんさやねえちゃんが死に、甥で恋人だったしんちゃんまでが死んで、誰もいなくなった世界でこれまでの人生を振り返りながらかぞく史を綴っていき…という話

 

めちゃくちゃ良かった

ハヤカワSFコンテストに応募されて優秀作になった作品だけど三島由紀夫賞候補になった異例の作品っていうのが納得

SFでもあり純文学でもある小説がこんなに良いんだなと思ったけど

よく考えたら極端な世界設定で

力を入れて描く対象を人の心にしたら

そりゃあ興味深い作品になるよね

作者のこれからの作品楽しみすぎる

どういう方向性の作品を書いていくのかわからないから

 

では具体的に良かったところを3つほど紹介

まず1つ目は

父親との関係と不老不死

父親が主人公を保存するような目的で

融合手術を受けさせて

それで人間じゃなくなった

っていう身勝手さ

親から与えられる避けられない影響っていうものが描かれてる

それはSFでもそうじゃなくても変わらないもので

未来のことが書かれてるからそれでも変わらないもの、変わってくれないものという位置付けの親との関係が印象深く残りますね

 

2つ目は

過去に取り残される感覚

不老不死技術が問題視されて

だんだん過去のものになって

より未来では人間の在り方が違うから

過去のまま不老不死になっても古い人間と見なされうる

っていう想像力に感動してしまった

自分の学生時代のカルチャーをずっと覚えてる感じも現代を過去として捉えた場合で考えられてて

未来の描写の説得力がありましたね

過度に変化した未来じゃなくて人間の性に起因したものだけは変わらない未来を描くSFに初めて触れた

とても良かった

 

3つ目は

人を愛させることへの贖罪

これがこの本で最も強く主張されてると感じたところで

人に働きかけて自分を愛させるように仕向けることの贖罪を後悔として書かれていて考えさせられた

人に愛されたい欲求が人にはあって

それを埋めるためには他の人が必要なんだけど

その人を自分の力で愛させてしまったら愛されたい欲求を満たすためにその人を使ってるみたいになってしまう

でもそんなこと言ったら自分でできることはなくなってしまうから

人の自我の存在を信じて

自分の力とは無関係に相手が自分を愛してくれたって信じるのが一番なのではないかという結論

でもこの後悔はなんか分かるところあるよね

 

SFってこういう使い方もされるんだな