芥川賞受賞作
話は、
裕福だった頃の浪費癖が抜けずに借金を作り続ける母と弟をもつ主人公の奈津子がその当てつけかのように庶民的な太一と結婚している。その太一は現在不治の病にかかってしまってしまっているが、奈津子と太一は奈津子が子どもの頃に訪れた高級ホテルに行き、そこでさまざまな思い出が蘇っていく…という話
鹿島田真希さんの作品を初めて読んで、
こんなに繊細で上品な文章を書く男性の作家さんがいるんだって思って読んでたんですけど、
女性でしたね
真希さんですもんね
全体的な名前の雰囲気に騙された…
で、本当に美しい文章ですね
面白かった点を2つほど
まず1つ目は奈津子の太一に対する気持ち
太一の描写は下品というかあまり好印象な言葉が使われていなくて
最初は奈津子がそれに飽き飽きしている様子なのかと思ったら違くて
奈津子が太一に過大評価も過小評価もすることなくただ親しみをもって接しているというだけなんだろうなと思いまして
それが人間愛みたいなものを描いているようでとても良かった
2つ目は太一と家族の対比で
浪費癖があって大した人間でもないのに自分達を大きく見せようとする母と弟
それに対してどこまでも泥臭い太一
という両者を比べながら描いていくことで
母と弟に愛想を尽かしている奈津子がとても太一を信頼している様子が伝わってきて
太一の行動が清々しく思えてきて
良い
芥川賞のなかでもこれほど品を感じたのは初めてかも
綺麗で上品な文章を描けるのは羨ましいなぁ