あらすじ
高校生にして小説の新人賞の最終候補に残っている坂下あたるは浦上さとかと付き合っている。詩を書くのが趣味で坂下あたるの友人である佐藤毅は浦上さとかに惹かれている。
ある時、坂下あたるが投稿している小説投稿サイトに坂下あたるαというアカウントができる。やがて坂下あたるαは坂下あたるの作品の内容を吸収し、オリジナルの小説を書き、それは本物の坂下あたるの才能を超えていて…という話
町屋良平さんの作品に出てくる登場人物たちはとても魅力的ですね
一人ひとりの個性が際立っているけれど日常の空気感は一切壊さないような絶妙なラインで読んでて親近感も湧きながら物語に入り込める
では具体的に良かったところを2つほど紹介
1つ目は、詩と文学論
詩とか文学とかの創作物を概念的に捉えて〇〇は文学だとかっていう論めっちゃ嫌いなんだけど
この話の場合は高校生らしさに思えて良かったな
どうしても論って力の強い人のものをよく聞いてしまうから拒否感あるけど
青春とか思春期とかってエネルギーや思想を感じるものも美化してくれて魅力にしてしまうものなんだなあ
2つ目は、AIの怖さと抵抗
この話の主題はこっちで
AIが何でも吸収して機械学習する怖さと
それに抵抗する心地良さが熱量高く書かれてる
機械学習への危惧って創作物に関してはすごくよくわかるよなあ
創作物によって救われる人がいるように
創作することで救われる人もいて
その人たちの救われる道を必要不可欠とは言えない技術によって断ち切ることって
とても暴力的で怖い
この話の場合はそれに抵抗することによる
カタルシスみたいなものを感じられて心地よいのだけど
最近世間全体として読者とかの受け手側が創作者を重んじない風潮が広がっているから
不穏な空気を感じてしまうな
この話には色んな角度の熱量が込められているから面白いと同時に危機感も感じたな
でもそれが読者の魅力の一つだよねえ